2020年秋の近鉄全線制覇~3日目その3~


管理人が正月3が日に必ず観戦する箱根駅伝
中でも近年「花の2区」に次いで往路の戦いの山場となっているのが、「山登りの5区」であります
その5区の折り返し、「山下りの6区」では、襷を渡し終えて回収された選手が医務スペースで靴を脱がされて足の裏を消毒され、痛みに悲鳴をあげる姿などが大会後のドキュメンタリーで放映されます
あまりに急な勾配を時速20km/h以上の速度で駆け降りるため、足の裏の皮膚が靴や靴下との摩擦に耐えられず豆ができて破けてしまう、酷いケースになると皮膚自体が擦り剝けたり爪がめくれあがったりして大出血するのだとか
毎日ハードなレーニングを積み重ね足の裏の皮が分厚くなっているはずの学生アスリートですら、「天下の険」の急勾配にはやられてしまうわけです
今回管理人も彼らのこの痛みををわずかながら想像する機会を得ることができました

 

そう、
近頃運動らしい運動もしておらず
完全にインドアな大学生が、
いきなり葛城登山口駅(標高315m)からJR御所駅(標高90mくらい)までの道のり3.6km
高低差約220m
(特に葛城登山口駅~櫛羅交差点付近(標高140mくらい)は水平距離約1.5kmで高低差約170mなので単純計算で約113‰!)
約2㎏の荷物を背負って
ロングコート、普通の運動靴という装備で
40分で下っていく
などという計画をぶち上げ、しかも実行してしまったのです

 

箱根駅伝の5/6区を占める国道1号線と国道138号線の場合、

なるべく等高線に沿うように経路をとり、大平台・小涌谷などで等高線を横切るときにはつづら折りにすることで、勾配を頑張って緩和しているのに対し、今回私がたどっていこうとしている道はというと

等高線なんてぶった切っていくぜぇぇぇぇ!!!!
と言わんばかり
すがすがしいまでに一直線に山を下りていきます

ちなみにバスが通ったルートがこちら
こちらも似たり寄ったりであります

 

そんなこんなで9:15、葛城山ロープウェイを撮影し終わった管理人は、当初予定より5分遅れて葛城山登山口から小走りに進み始めました
駅前に犬つれてきてロープウェイが出るのを見ていたお爺さんが見送ってくれました
……変な顔してましたよ?
「あれ、お前は山下りるんか……?」
みたいな(笑)

 


歩き始めて1分
葛城山駐車場前に来ました
大きく曲がっている幅の広い道がバスで登ってきたルート、まっすぐ続く細い道が当初管理人が山下りに想定していたルートです(上のルートもそうなっている)
しかし実際に見てどうでしょうか
この先ちゃんとした道が続いているとは思えなかった管理人は、瞬間、最短ルートを放棄
途中までバスルートをたどることを決めます
来た時と同じく御所市街を眺めながらヘアピンのカーブを曲がり、梅室口バス停近くの野球グラウンドまでたどり着くと、なんと先ほどバスで通った時にはいなかったウォーミングアップする野球選手ら
近くに学校は見当たらないのですが、彼らは社会人野球の方々だったのでしょうか
まさか使われているとは思わなかった野球グラウンドを脇に見て、再びヘアピンカーブを曲がっていきます

 

歩き始めて10分弱
ここで
来るときに
「ここショートカットできそうじゃね?」
と思ってバスの車窓に見ていた坂道が姿を現しました

 

さきほどの

こことは違って道の両側がかなり開けていますし、なにより先まで見通せます
ロープウェイの発車が遅れたために移動を開始するのも遅れ、しかも先ほど最短ルートではなくバスルートを選択して距離が長くなってしまったために、どこかで何としても遅れを取り戻したかった管理人は、ヘアピンカーブのために大回りするバスルートよりも明らかに短そうなこの道をたどっていくことに

 

その道に入っていくための交差点近くに建っていたのが
こちらの水車小屋
何に使ってんだろうと思って帰ってから調べたら、GoogleMapsには
公衆トイレ
と書いてあったのですが、GoogleMaps以外にここを「公衆トイレ」と案内しているようなサイトはない
おまけにレビューには
「トイレは女性用はあきらめて
廃墟状態で使用出来ません」
「展望台(例の道とバスルートとの交差点付近に、もうひとつ水車のついた建物がある)は上に行くと床が抜けるかもしれない
と散々な言われようです
水車が気になったので写真は撮りましたが、確かめる暇というのはないのでどんどん先を急ぎます

 

おそらく耕作放棄された元棚田でしょう、土地がほぼ等高線に沿って段々になっています
ここをほとんど曲がらずに突っ切っていくので当然道は急坂
群生しているススキ野を横目に、管理人の足の裏が悲鳴をあげ始めます

 


道の両側に住宅がちらほら見え始めたところでようやく急勾配は一息

歩き始めて15分強
T字路を右・左と曲がって

バスで通った奈良県道213号と交わる十字路まで戻ってきたときには、ひとまずほっとした心持となりました

 

ちなみに
この写真で奥の方に見える
この道路が、
この交差点の真正面に見える、奈良県道213号です
いかに短区間で勾配を下りてきているかがわかるかと思います

 

下り坂のショートカットを通ってきたのでだいぶ遅れを取り戻しました
さあ、ここからは平坦な道をただひたすら道なりに歩けばゴールです
JR御所駅に向かって道は緩やかな下り勾配になっています
しかし作家の三浦しをん氏は、箱根駅伝を題材にした小説「風が強く吹いている」で、登場人物の「ハイジ」にこう言わせています
「箱根の6区は山を下ってからが勝負だ。箱根の湯本から中継所までの平坦な道が、まるで上り坂のように感じる」
なるほど、今まで急勾配だったが故に、自分の限界を遥かに超える、長距離歩行にはあるまじきハイペースでも全く支障なく歩けた反動で、平地になってから歩くスピードが調節しづらく、しかも物凄く遅くなったように感じます
まさに「山を下ってからが勝負」「平坦な道が、まるで上り坂」であることを全身で体感しています

 

管理人の身体も疲労がたまり、足の裏もヒリヒリするくらいに痛くなってきた終盤戦ですが、気を急いて呼吸を乱したら一大事、

ここ「櫛羅(くじら)橋」で一度ペースを整え、同時に暑くなってきたのでコートを脱いで手に持ちます
そうです
行きのバスの中でちゃんと聞き取れなかった「櫛羅口」バス停、なんと呼んでいたかを知ることが出来たのは、図らずもこの「櫛羅橋」で態勢を立て直す際に橋の銘板を確認できたからでした

 

さあ、ゴールはあと1km強
マクドナルドの横を過ぎ、御所駅南交差点も信号に引っかからず直進
JR和歌山線の踏切がすぐそこに見えてきました
っと
これはなんということでしょう
今日は日曜日です
感染症が流行っているとはいえ、商店街ならば買い物する人が一人くらいはいてもおかしくない日のはずです
ところが私の行く先に見える新地商店街、店々はシャッターをしっかり下ろしており、買い物をする人どころか通行人すらひとりとしておらず、文字通りシーンと静まり返っています
太陽が差し込まないアーケード構造となっているためにこの道全体が薄暗く、そのことが不気味さを助長させます

 

時刻はもう午前10時になろうかというところ
ご覧ください
車の一台も止まっていません
ゴーストタウンと化しています

 

奥に見えるパチンコ店すら
潰れてから何年も経っているようでご覧の有様
このパチンコ店と隣の「パンのヤマザキ 野口菓子店」(無論この店も閉店していました)の間に細い道があって、ここを抜けるとJR御所駅の東口までショートカットできるため、管理人はやむを得ず恐る恐るこの商店街へ足を踏み入れたのです
踏み入れましたけれども踏み入れることを本気で躊躇しました
それくらい人間が生活している形跡がないのです

 

その細い道の途中にあった「喫茶 昴」
入口の扉、右側の上から4枚目のガラスが半分カーキ色に見えるのは、察しのいい方は気がついているでしょうが、割れていて中のカーテンが見えているからです
もはや潰れていて誰も管理していないようですが、窓際にはものが残っており、メーターもついています
この街はコロナウイルスなど関係なく、おそらくは過疎化によって大変なことになっています
悲しいかな、この光景は、現在進行形で日本のあちらこちらで見ることが出来てしまうのでしょう

 

最後の最後に怖い思いをしてたどり着いたJR御所駅は
駅舎自体は明治期に創建されたものながら、内部はリニューアルされたおかげか綺麗でした

 

そんなこんなでJR御所駅には9:50に到着
実際に歩いたルートはこちらです

葛城山ロープウェイの撮影場所からJR御所駅までの3.9km、標高差は実に238mにも及ぶ道のりを、管理人は見事35分で走破しました
幸いにして足の皮が剥けたり爪が剥げるような事態には陥りませんでしたが、靴下(おろして半年ほど)は両足共に穴が開き、その穴から皮膚と靴がダイレクトに擦れたため、御所駅に到着する頃には足の裏が擦り剝ける寸前に(ただ歩いている最中はアドレナリンのおかげかそこまで痛くはなかった)
靴底は一部ゴムがなくなるまで擦れ切れてしまい、残っている部分も滑り止めとして彫られた凹凸がほとんど消えてなくなってしまいました
箱根駅伝6区を走る(走った)(元)学生ランナーの皆様、小さいころ「山下りって一番楽じゃね?」とか思いながら駅伝を観ていて、本当に申し訳ございませんでした
駅名読み方大全の管理人、今回箱根に匹敵するかの如き「山下り」を実際に行い、初めてその大変さを身をもって実感しました

 

さあ、大変な思いをしてまで山下りを敢行したのは、1時間に1本しかないJR和歌山線の列車に乗るためです
御所駅9:54発の和歌山駅行きに乗って、目指すは近鉄とJRが相まみえる吉野口駅です
これは近鉄線を使って近鉄御所→尺土→橿原神宮前→吉野口と乗ると遠回りで時間もかかり、かつ次に撮りたいものの時間に間に合わないためです
210円を払っていざショートカットです